美坂イリス

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 虹のはじまりを探して、私たちは走り出す。


 きっかけは、他愛もない一言だった。それは、見上げた空に、虹の架かった午後三時。
「虹って、どこから始まってるんだろうね」
 その言葉に、私たちはふと黙り込んだ。それはそうだ、知っているはずのことでも、それを本当に見たことはないのだから。
「じゃあ、探してみようか」
 そして、私たちは虹を追いかけた。道路の向こう、路地を抜け、高台の公園を過ぎて、隣の街まで。やがていつしか陽は落ちて、虹も姿を消していた。そこに残ったのは、私たちの笑い声だけ。

 虹のはじまりは、どこにも見つけられなかったけれど、きっと、私はこの冒険を忘れることはないだろう。

7/28/2025, 10:51:25 AM