踊りませんか?
「踊りませんか?」
そう言って手を差し出してきたのはほぼ話したこともない同級生。隣の隣のクラスの男の子、接点などあろうはずもない。なぜ、私?
差し出された相手の手を取ることも出来ず凝視する。
「あれ、固かった? じゃあ、踊る?」
無反応の私に首を傾げながら再び手を差し出してくる。
「Shall we dance?」
こっちの方がいい?とやたら完璧な発音で有名な誘い文句を繰り出される。
「いや、言い方じゃなくて」
我が校は。地方の片田舎のくせにプロムなどという小洒落たものがある。友人の多い社交的な人達にとっては目一杯はしゃぎ、いい思い出作りになるのだろうが。生憎クラスメイト以外付き合いもない、ひっそりと学生生活を送ってきた私にとっては有り難くない制度である。コツコツ真面目に3年間過ごし、卒業目前になぜこんな強制参加という地獄の時間を味あわねばならないのか。
「えーと…何で私?」
「えぇ、それ聞いちゃう?察してよ」
告白なんて出来そうにないから、こうやって好きな子誘ってんじゃん。あ、やべ。好きって言っちゃった。
察しろと言ったそばから結局自分でベラベラと喋り、再び手を差し出される。
「で。踊りませんか?」
私の答えは…。
10/4/2024, 11:31:37 AM