赤い糸(2023.6.30)薄闇の部屋の中で、鈍く輝く刃を左腕に押し付ける。そのまま大きくひとつ息をついて、刃を握る右手をスライドさせる。しぱしぱとこそばゆいような微かな痛みとともに、赤い糸が生まれる。一本、二本、三本……。「運命の赤い糸」なんてものは、きっともうとっくに切れてどこかへ行ってしまったけれど。目に見えないそれを少しでも手繰り寄せるために、今日も私は糸を紡ぐ。
6/30/2023, 1:34:30 PM