【セーター】
お母さんが夜なべして編んでくれたとか、好きな人に渡したくて頑張って編んだとか。
そんな話を聞いたことがあるけど、自分にとってはどれも一昔前の話だ。
そんな僕が思うセーターと言えば、冬にゲームを買おうとショッピングアプリを開くと、トップページに並んでいる……といったものである。
寒い時期、アプリを起動してすぐ目に入るトップページに、『おすすめ商品』としてセーターが並んでいるのだ。
無地のものもあれば、縦にラインが入っているものもあり、ノルディック柄のものなんかもある。色もカラフルだ。
普段はあまりファッションに興味がない僕も、一度目に入ってしまえばしばらく眺めてしまう。
どれを着たって自分の顔や体型が変わるわけではない。自分の印象が大きく変わるってこともないだろう。
だけど、本当に何となく、これを着たら少しは気持ちが明るくなるかな、などと考える。
それこそ僕が密かに好きなあの子が、「似合ってるね」「暖かそうだね」なんて言ってくれて、そこから仲良くなれたらいいな……とか。
だから僕は、一年に一度、一枚だけセーターを買う。
まんまと『おすすめ商品』を勧められたままに買ってしまっているわけだが、誰か、或いは何かに勧められでもしなければ、服など手持ちのものや貰いもので済ませて、自分では一生買わないかも知れない。
だから、これはこれでいい機会だと思うのだ。
今年はクリーム色のセーターを注文した。正面のケーブル編みが、どこかレトロでお洒落だ。
大体3日後には、家に届くらしい。自分に似合うといいなと思いながら、僕は去年買った青いセーターを脱いで風呂に入った。
11/24/2023, 10:49:58 AM