香水
「贈り物ですか?」
綺麗にディスプレイされている香水を手にしては戻し、また別の品を手にとりを繰り返すこと数回。店員さんに声をかけられる。普段入ることなどないセレクトショップ。並べられている商品も縁遠く途方にくれていた。声をかけてくれた店員さんにこれ幸いと頷く。
「はい。お世話になった方へプレゼントしたくて」
まぁ素敵ですね。お相手は女性の方ですか、等々、質問されるままに答えていく。
半年前、卒業したばかりの高校の担任。歳上の女性。そしてこれは伏せるが初恋の相手。ご家族の都合で遠い地に引っ越すことになったらしいとかつての同級生に連絡が回った。
急なことでもあるため皆で集まって見送る時間もなく。本当に慌ただしく旅立ってしまった。個々にお別れのメッセージは送ったがすっきりしない。そんな時ふと思い立った。そうだ。プレゼントを贈ろうと。おあつらえ向きに明後日は先生の誕生日だ。
香水を選んだのは何となくだ。自分の中の贈ってカッコいいプレゼント、ベスト3に入る。香りは記憶に残るとも言うし。あと一つはまだ買えないけどワイン。残りは、何だろうね。
そうして俺は、優雅な小瓶を手に入れた。青臭く告白めいたカードも封入し、梱包は万全。送り先は遠方のため航空便でと宅配業者の窓口を訪れる。しかし。
「申し訳ございません。香水は航空便では取り扱い出来かねます」
意気揚々と発送に訪れた俺は自分の無知を知る。
一人舞い上がっていた気持ちが萎んでいく。通常の発送は出来るけど誕生日である明後日には間に合わない。断りを入れ窓口を後にする。
そっかー。香水って飛行機じゃ送れないんだ。一つ学んだ。あー青空眩しい。
8/30/2024, 1:16:16 PM