――1000年先も私が残れば嬉しいわ
13世紀の西欧、夢見がちな彼女のためにその半生を賭けた画家がいた。
しかし半生といっても十年。
流行病で逝去した彼女は、享年25歳でその天才的とも呼べる画家の生涯を閉ざした。
展覧会で展示解説をされるような作品は良いものと相場が決まっている。そう言って私の連れは、学芸員を軸とした人混みに同化している。
絵画自体は何の変哲もない肖像画だ。齢15から描き始めたにしては些か写実的に“出来すぎている”が『天才』とその範囲で収まるものだろう。それに作者の日記が現存していることが、この絵画の文化的価値を上げているらしい。
この作品にこれ以上の説明が残されていないのか、学芸員は別の絵画へと進み始める。伴って人混みも横にズレていった。
「凄いわね……私はカメラでいいけど」
隣の連れが呟く。
現代っ子め。苦労したのに。
【1000年先も】2024/02/03
2/3/2024, 11:34:04 AM