砂を、袋に入れていた。
甲子園の初戦で敗れた私たち高校の野球部は、
丁寧にかき集めながら、
砂を袋に入れていた。
その姿を、私は三塁側の応援席から見ていた。
見ているだけだった。
その姿に、ふと昔のことを思い出した。
砂の記憶。
幼少期の砂場。
友達がいない私は、一人、砂のお城を作って遊んでいたっけ。
360度どこから攻め込まれても迎撃できるように、
ぐるりと砲台で囲まれたお城。
夕方、日が暮れるまで一人でせっせと砂のお城を作っていた。
そうしているうちにパラパラと雨が降ってきて、
360度どこからも迎え撃てるように作った私のお城は、
どんどん崩れて、溶けて、流れてしまった。
なぜ、頑張って作ったのに壊れてしまうのだろう。
なぜ、頑張ったのに負けてしまうのだろう。
その事実に世界の無慈悲を想った。
神様はいじわるだから、たまにこういういたずらをするのかな。
それが運命なのかな。
でも、それでも、どう生きるかは、自分次第なんだよね。
きっと。
…
そっか、それに気づくために、
今ここにいるんだね。
『最初から決まってた』 完
8/8/2024, 9:47:19 AM