ほんの小さな、小さな頃。
緊張で震える手で差し出した、真っ赤な一輪のコスモスを、あなたは憶えているでしょうか。
しらゆりのような佇まいの、うつくしいあなた。
ほほをふわりとばら色に染めて、ありがとう、と。
ひまわりみたいにまぶしくすてきな笑顔を浮かべて、受け取ってくれましたね。
仙人掌の様な佇まいの物言わぬわたしが、あなたみたいな高嶺の花に手など届くまいと、分かってはいたのです。
けれど、どうしてもどうしても、何年経っても、この気持ちを捨て去ることは出来ませんでした。
あなたに大切な人が出来ることは、嬉しいことです。
でもそこに在るのは、わたしでありたかったのです。
だからあなたを、今日この場所へ連れてきました。
真っ赤なコスモスの、花畑。
ありったけの愛情を、あなたに。
仙人掌を見上げたしらゆりは静かに微笑んで、わたしの手を取り、自らのほほへ導きました。
ばら色のほほが熱くて、わたしの棘などどこへやら。
物言わぬわたしの顔色も、つられて赤く染まりました。
仙人掌に、花が咲く。
無垢なあなたのそばで、枯れない愛の大輪を。
赤いコスモス:愛情
百合:無垢
仙人掌(さぼてん):枯れない愛
10/11/2025, 3:28:56 AM