灰燼

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「俺の好きな色?うーん。白、かなぁ。」

彼がそう言っていたのを今でも憶えている。
理由はどんな色にもなれるから、らしい。
彼は黒が好きなんだと思っていたから、その話を聞いたときは飛び上がるほど嬉しかった。
白は私の色だったから。彼の好きな色を纏っている私は彼の隣に立つのに相応しいと思った。

でも、駄目なんだよ。白は何かと混ざったら絶対に元の色には戻れないんだよ。
彼はそれでもいいと言っていた。違う。私が許せないの。あなたの隣に立つのは真っ白な羽を持った者じゃないと許せない。

私の羽はどんどん濁っていく。やがて私の羽が真っ黒に染まり切ったとき、笑いながら彼は言った。
「やっと、堕ちてきてくれた。」

6/22/2024, 12:19:48 AM