英雄になるって、小さい頃に君は言っていた。
100均で買ったおもちゃの剣を右手に持ち、空に掲げ、室内に取り込まればかりのバスタオルをマントのように羽織り、いつも英雄ごっこをしていた。
君は成長して、数奇な運命に呑み込まれた。
数多ある世界線、パラレルワールドを君は知った。
それは延々と燃えたビル群。
折り重なるように積み上げられた、息のしない子供達。
未来の権利を剥奪された、白髪の大人達。
胸を槍で貫かれる、己の姿。
千、万を超えるパラレルワールドを見た君は、吐瀉物さえ口から出すことが出来なくなった。
観測した全ての世界線は、必ず終焉を迎え、炎炎と燃え尽き、えんえんと子供の泣き叫ぶ声が聞こえたのだ。
君が生きているこの世界線だけは、まだ滅びを迎えず、その真実知る君が生き残っている。
炎が炎炎と君のそばに近づく前に
涙が延々と響き渡る前に
この世界を延々と生きながらえさせる為に
君が、英雄になるんだ。
お題『パラレルワールド』×『炎炎』
9/26/2025, 5:56:58 AM