いろ

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【見つめられると】

 君の瞳が、嫌いだ。いつだって真っ直ぐに僕の姿を映し出す、その透徹な瞳が。
「本当に、貴方はそれで良いの?」
 うるさいな、良いって言ってるじゃないか。頼られるのも、誰かの役に立つのも、決して悪いことじゃないんだから。
 彼らが口にした部活や塾で忙しいという言い分だって、たぶん嘘ではないだろう。そうして積み上がった書類を僕なら一人で捌ききれるって信用も、あながち間違ってはいないんだ。だったら問題視することなんて、何もない。
「ねえ、本気でそう思ってる?」
 夜の水面を切り出したみたいな君の真っ黒な瞳に、ゆらゆらと。歪んだ僕の顔が、無機質に反射している。それを見ていたくなくて、視線を逸らした。
「ちゃんと私の目を見て答えてよ」
 だけど君は、そんな僕の逃避を許さない。のろのろと目線を戻せば、差し込む夕日に照らされた力強い君の眼光に捉われる。
 ああ、駄目だ。君に見つめられると、強がりが剥がれ落ちてしまう。温厚で頼りになる優等生の仮面なんて、どこかに吹き飛ばされてしまう。
 てつだって、ほしい。掠れた声で囁けば、君は満足そうに笑って僕の額を指で軽く弾いた。
「最初からそう言ってよ。私ならいくらだって、手を貸してあげるから」
 今日もやっぱり、君には敵わない。だから僕は、君の瞳が大嫌いだ。

3/28/2023, 11:51:34 AM