好きな本
あれ?本、どうしたの。 無空間になった本棚を見て、年上の彼女が言った。
全部売った。さすがにスペースが厳しくて。完全電子書籍男になりました。
そう。まあスッキリしていいんじゃない。本棚も片付けるの?
悩み中。
何を。
処分するかプラモデル飾るか。
プラモデル飾るのも本飾るのも一緒じゃない。処分すれば?
本を飾るって……。どちらにも興味の無い彼女には、どちらも同じに見えるらしい。
だいたい、このプラモデルも限定品だぞ。たった一隻で宇宙を突き進む船。なんと美しい。
まったく、男のロマンがわからん奴め、とは言えず、
うん、処分する、と答えた。
でもさ、そうなると、もうあなたに本のプレゼントはできないね。残念。
ああ、そうかもね。まあ時代の流れというやつさ。
時代ねえ。じゃあ次のプレゼントからは、最先端のものにしてあげる。ボタンとコードがいっぱいついてるやつ。
僕、機械オンチだから難しいのは勘弁してね、と笑って答えた。
全部売ったと言ったけど、嘘だ。机の中に十数冊しまってある。贈り物の本。僕の好きな、大切な本。
6/15/2024, 11:04:08 PM