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「赤い紫陽花が青に染まってたらその下には死体が埋まってるって話知ってるか?」
「何、その信憑性のない話。」
「さあ、なんでも紫陽花は土は酸性だと青になってアルカリ性だと赤になるらしくてさ。で、死体は腐り始めると酸性になるから青に染まってたら死体が埋まってるんじゃないかって噂だぜ。」
「ふーん、ちょっと怖い話ね。」
彼はネットや本で面白い話を見つけるとよく私に話したがる癖がある。まあ、暇つぶしにはいいものだったからよく聞いてあげていた。
「でも、面白い話ね。知れて良かったわ。」
「だろ? やっぱりこういう話を調べるのは楽しいわ。」
あの楽しい時間が蘇る。


窓から咲き誇る紫陽花を眺める。ああ、懐かしい。
彼は紫陽花の噂について自身たっぷりに話していたこと
を思い出す。ねえ、私もね一つ紫陽花について知ってる事があるのよ。
紫陽花の花言葉を。「移ろい」という意味を。
あなたはあの時から私ではない他の誰かに目移りして
いたんでしょう? 本当に腹が立つわ。でももういいの。
青く咲いている紫陽花を見ながらうっそりと私は笑う。 「本当ね。あなたのおかげで青くて綺麗な花になったわ。ありがとう。」
あはは。楽しそうに笑う彼女の声は雨に掻き消された。

『あじさい』

6/13/2023, 1:06:49 PM