護たかこ

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23時、もう寝るかな、と考えていたところにLineの通知が来た。
蓮火からだ。

『いまなにしてんの?』
『寝るとこ』
『そっか、外とか出れないよね?』
『行けるよ』
スタンプを返す。

家を出て自転車を漕いでる合間もスマホに通知音が鳴り続けてたけど、どうせ蓮火からだから未読にしておく。

無人駅に着くと
「え?場所伝えてないよね…?よく分かったね!ちょっと家出?みたいなさぁ…飛び出て来ちゃった」
「そんなことだろうと思った」

『家出すると、しょっちゅう無人駅に来るんだよね冬はストーブ付いてて暖かいし人来ないからベンチで幾らでも寝れるし』
『こんな田舎で不便だけど無人駅があることだけには感謝してんだ』
と蓮火が教室で言っていたのを、忘れていなかった。

二人で好きなだけ色々喋って朝日が見え始めた頃
「もう落ち着いたし、やっぱ帰ろっかな、行くとこもないし…ごめんね、こんなテキトーな奴に付き合わせちゃって」
「いーよ」
「親、心配するんじゃない?」
「窓から出てきたから知らないよ、また窓から帰る」
「まじで?!2階から?すげーな、やっぱ面白い奴!!」

私を面白いと言ってくれるのが嬉しかった。
話しかけてくれて、それからずっと友達になってくれて嬉しかった。
中学の3年間、ずっとボッチで虐めに遭っていたのを知った癖に何も聞かず友達でいてくれて嬉しかった。
だから、全然こんなこと、なんてことない。

「あっ、朝日登ってきた!朝焼け、めちゃくちゃキレーじゃん!!」
蓮火がはしゃぐ。
朝日の温もりを感じながら2人、肩を並べて歩く。

蓮火は声優を目指し、高校を出たら専門学校へ進む。
私は家業を継ぐ為に地元に留まる。
ずっと2人、同じ夢を見ていけたら良かったのに。

この眩しい隣人は別の道を歩む私と未来でも友達でいてくれるだろうか。


お題 「朝日の温もり」

6/9/2024, 12:09:20 PM