忘れたくても忘れられない
あなたを忘れたいのに、あなたを忘れられない。
あなたはもうここにはいないのに。
四六時中あなたの笑顔が、泣き顔が 思い浮かぶ。
…なんでだろうね。
今まで一度しかあなたの顔を見たことなんてないのに。
去年の冬
私は妊娠を中絶した。
愛する彼と「一緒に育てていこう」って約束したのに
彼はそれを守ってくれなかった。
でも私は、それでも産もうと決心していた。
だってこの世に産まれてきてくれた
私達の
……私の宝物だから。
ある日
歩き疲れて、公園で休んでいると
女性二人が隣のベンチにやってきた。
そして耳にしたこんな会話。
「同性でも子供が産めたらいいのにね。」
「そうだね。かわいいだろうなぁ…」
「うんうん! 私が親になったら親バカになっちゃうかもしれないな笑」
「私も。超過保護にして…それから好きなものは何でも
買ってあげたい!」
…そっか
この二人は婚約者なのか。
この二人に子どもが出来たら子供も二人も幸せだろうな
ふとそんなことも思った。
それから半年経った頃
私は出産した。かわいい女の子だった。
私の出産に立ち会ってくれたのは
看護師さんと
それから…あの二人組。
二人は横で私の手を握りながら
「うわぁーん!!」
「おめでとうございますー!!よく頑張りましたね!」
と一緒に泣いてくれた。
やっぱりこの二人は純粋で良い子達だ。
私はあの日
二人にこう言ったのだ。
「私の子どもをあなた達が育ててくださいませんか?」
本当はこんな気なんか微塵もなかったけど…
この子を女手一つで育てたって
貧乏な思いをさせて、この子自身は幸せに
なれないと思ったから。
苦渋の決断だったけど
二人なら信頼できる。
ー「…本当にありがとうございます。
こんなにかわいい子を…」
「あの…時々会いに行ってもいいかしら…?」
すると二人は迷わずに受け入れてくれた。
「もちろんです!!」
それから私はずっと一人暮らしだったけど
寂しくはなかった。
今はもう彼女らのところには行ってない。
もうあの子達には
あの子達なりの人生があるんだから。
私は邪魔したくない。
…でもね
やっぱりね
忘れたいのに忘れられない。
10/17/2023, 11:48:26 AM