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逆光

空が橙色に染まる。光が傾いてキミの姿を黒くする。
きっと僕の姿は、彼から見たら顔が見えるほど明るく見えるのだろう。
僕からはその顔も見えずらいってのに。
長く伸びた影からわかる。キミは僕の後ろから手を振っているんだよね。

キミはいつもそうだ、この時間、この場所でしか会えない。
いつからあったのかわからない、でもキミはいつもここにいる。ここを通るたび、キミはいつもいて、ここを通るたび、僕の後ろをついてくる。
不気味で仕方ない。

キミは約束してくれたね。
この道を通るのであれば、僕のことを守るって。
危ないから守るって。何から守ってるのか知らないけど。
そしてもし、転ぶことがあれば、


その子は今日ワタシの前で躓いた。
そう、転んだのだ。ころんだ、ころんだね。
約束通りにしようね。ころんだんだから。

荒い息遣いがその子から聞こえる。
やっぱりこわいね。あたりまえだよね。
言ったもの、約束したもの、転んだら喰らうって。


ちがうよ、転んでない。
ただ、そう、靴紐が解けたのを直そうとしただけ。
橙色の光が増す。ますますキミの姿が黒くなる。
キミの大きな影が僕にかかる。

なぁんだ、そう。次からはキツく靴紐を結んでおくんだよ。この道は危ないんだからね。あぁ、残念だ。

そうだね、危ないね。ご忠告ありがとう。
もうすぐこの道の終わりだ。
キミとはいつもここでお別れ。じゃあね。黒いキミ。

またね。またこの道を通ってワタシに守られてね。

キミはそう言っていつもの通り手を振ってる。
すっかり日の明かりがなくなった空のなか、
くっきりとキミの黒い姿はみえた。
やっぱり、キミのことはわからないや。

1/24/2024, 11:25:25 AM