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『ところにより雨』

今日は僕たちの番らしい。

姉ちゃんが交通事故で死んだと、父さんから報告を受けたのが、つい10分前の事だった。

婚約者を紹介するため、群馬県にある我が家に、高速道路を使って向かっていた姉と婚約者の男性は、大型トラックに背後から衝突され、即死でこの世を去ったらしい。

遺体は潰れてぐちゃぐちゃで、もはや人の原型も留めていなかったそうだ。

トラックを運転していた54歳の男性は、軽度の打撲で済んだとか、どうだとか。


だけど怒りや悲しみは湧いてこない。

まだ、何も脳が理解していない。
いや、理解したら壊れると、分かっている。

大好きな姉と二度と言葉を交わせない悲愴と絶望。
危険運転で人を殺しながら、自分は軽傷で済んだ社会のゴミクズに対する怒りと殺意。

そんなもの、認識してはいけない。
認識したら壊れてしまう。

だけど、どうにも、抑えきれそうにない。

母が発狂したように泣き叫ぶ声が、家の中に響いている。
父が静かに憎悪と憤怒を燃やす気配が、家屋を震わす勢いで漏れ出ている。

不意に、僕の右頬を、雫が伝っていた。
ポタポタと、畳の上を濡らしていく。

そうか、今日は僕たちの番なのか。

気まぐれに降り注ぐ絶望は。

僕たちの元に落ちる事を、決めたらしい。





3/24/2026, 1:35:41 PM