くらげ

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【天国の父の声】
僕はあの日のことを忘れない。あれは8歳の時のことだった。


僕は4人家族だった。父、母、姉、僕だった。ある家族旅行の日だった。
「退屈〜!」
僕はそう嘆いて暴れた。
「こら、あと少しなんだから落ち着きなさい!」
母がそう注意しても、僕は聞かなかった。
「あ〜あ〜!」
僕はそう言いながら暴れ、自分でシートベルトを外した。運転してる父の肩を掴み揺さぶり、ハンドル操作を誤らせた。
ガッシャーン!
「え…?」
この事故で両親と姉が亡くなり、僕だけが生き残った。罪悪感から事故が起きてから20年間、俺は怒らない性格になった。周囲は怒らない僕を優しい人間だと思い、利用される事もあったが大切な人を亡くすあの経験に比べれば余裕だった。

だが結婚して子供が産まれて、父として子供を叱るべき場面でも僕はうまく怒れなかった。優しいだけの父として嫁や娘からも舐められていた。

そして娘が8歳になった年のある日。家族で熱海に向かう道中、山道が続いていた事もあり、娘が退屈だと騒ぎ始めた。
「もうすぐ着くから我慢してね」
そう僕は優しく注意しても娘は言う事を聞かず、
「ひーまー!つまんなーい!」
と自分でシートベルトを外して、俺の肩を掴もうとする娘をバックミラー越しに見た瞬間だった。20年前のあの光景と当時の父の声が聞こえた気がして
「やめろ!!」
と気づいたら僕は大声で怒鳴っていた。僕自身も驚いたが、おかげで無事熱海に着く事ができた。それから嫁と娘は僕への態度を改めてくれたが、あの時は天国の父が助けてくれたんだと信じている。

11/10/2024, 5:27:37 AM