お題『海の底』
あのね、お父様。
私、本当は知ってたの。
私《ムー》と言う【大陸】は、本当は存在しない事。
私は、今まで生きて死んできた人間達の、【数多の夢の集積体】でしかなかったって事。
本当は、私を直接消していれば、
お父様が悩む様な犠牲も、問題も無く、
全て、解決できた事も。
でも、お父様は私と言う存在をわかっていても、何も聞かなかったわよね。
それどころか、
ずっと、ずっと、
周りに居る1人の人間として、
孤児の子達と同じ様に、《自分の子》として、
色んな事を教えてくれた。
色んな景色を見せてくれた。
色んな事を話してくれた。
だからかしら。
私、人間の事大嫌いだったけど、
今は『好きじゃない』程度なのよ?
コレって凄い事なのよ?
私、隙あらば【私から】今度こそ、みんなを《海の底》に沈めようと思ってたんだから。
でも、気付いたらあっと言う間に時間になっちゃったし、私も、お父様と同じ様に人間に愛着を持ってしまった。
だからね、お父様。
お父様だけでも、私達の事を覚えてて欲しいの。
私が全て、《海の底》に連れて行くから。
私、今ならお父様との思い出とか、今まで会ってきた人達との思い出があるから、
また、あの冷たい《海の底》に行っても、寒くないと思うの。
だからね、お父様、そんな顔で泣かないで。
泣き笑いでもイイから、最後は笑ってお別れをしましょう?
きっと、お父様の夢は、まだ続いて行くのだから。
私も、笑ってお父様にお別れするから。
だからね、元気でいてね。
私を見つけた、もう1人のお父様。
By 【姫】と呼ばれた、ある大陸の化身より
1/20/2026, 6:12:37 PM