勉強以外のことは基本的になんでも楽しい。
そして、嫌なことがあっても仲間と笑い合えば大抵忘れる。
突然泣きたくなって、次の瞬間おかしくて仕方ない。
高校生とはそういうものだ。
「卒業写真、一緒に撮ろうよ」
「あー、わたしもその変なコスプレみたいなのしなきゃダメ?」
「「「だめー!」」」
「ハイこれ、美優は猫耳ね」
「うーごーかーなーい」
桜は不思議だ。
今年は無理かも、とちょうど思ったタイミングで満開に咲き誇る。
もう無理かも、と諦める直前のわたしたちの背をそっと押すように。
「また、桜?」
よく通る声の方を振り返ると、卒業証書を肩にかつぐようにして持っている由香里の姿があった。
「「「「ゆかり!」」」」
わたしはその姿を見て、ちょっと涙ぐんだ。
由香里は、元不登校気味の生徒で、わたしたちと一緒にいるようになったのは、高二の四月のときだった。
昼休みから登校してきた由香里とわたしは、桜を見上げていた。
「なんでそんなに好きなの?桜」
このときの由香里はまだすこし、ぶっきらぼうだ。
「え?綺麗じゃん。わたし、中学までアメリカにいたから、高一のとき日本に初めてやって来て、こんっっなキレーなものがあるんだって知って・・・」
「きれいだけど、その分散ったときの惨めさ激しくない?こっちが悲しくなるぐらいだわ」
「・・・でも、桜は来年もまた咲いてくれるでしょ?自分がいつか散るって知ってても・・・それってすごく、日本語でこういうの、何て言うんだろ。noble・・・」
「気高い?」
「っそう!それ!後、ちょっと由香里っぽい。誰に何言われても、学校は行かない!嫌いだから!って感じが」
「はぁ!?」
由香里は怒るとよく、わたしのほっぺをつねる。
「いたたたたー」
由香里はそれから、ぎりぎり卒業できるくらいの出席日数を確保し、無事にわたしたちと一緒に卒業できた。
大学は、わたしとは違うけど。
春が来ると、桜を見ると、わたしは必ず思い出すんだろう。
「撮るよー3・2・1」
カシャ
「ちょっとなんで目つむんの!?」
「あはは」
「由香里もっと寄んないと画角入んないよー」
「写らない作戦だろ!」
「バレたか」
「あんたはブレすぎ」
3/6/2023, 12:12:13 PM