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小学校くらいまで
鏡の向こうにも本当に別世界があるのではないかって
真面目に考えていた。
実際、そんな物語もある。
物語は物語だ、
鏡は光の反射を利用した道具だと大人は言った。
でも、私にはそうわかっていても
どこかで別世界の存在を信じていた。
まず、頭をぶつけてみた。
……痛かった。
指で触れてみた。
指紋がたくさんついて拭かなきゃいけなくなった。
鏡の前でジャンプしたり、鏡を覗き込んだ。
鏡に映った私もジャンプをし、覗き込んだ。
私は思いついた。
鏡を二つ持って来て、あわせ鏡にした。
どこまでも、どこまでも続く通路みたいになった。
私は覗き込んだ。
沢山の私がいた。
でも、私は鏡の中に入ることも、
たくさんの私一人一人の違いを見つけることもできなかった。
しばらくすると、諦めた。
今は実際に実行しようとしたり、
信じ込むことはしなくなった。
それでも完全に否定することはできず、心の何処かでもしかしたらと思うことはある。

8/18/2024, 11:55:13 AM