「もうひとつの東京タワー」
婚活イベントで出会った人とのデートは今日で三回目。
まさかお目当ての東京タワーの展望台に登る前に結論が出てしまうなんて。
だが、答えが出たからと言って、ここで帰るのもどうなんだろう……
星の見えない都会の空に、スッと伸びる矢印のような塔。
キラキラと輝く色は、目が痛くなるほど。
写真や動画を撮るカップルたち。
私たちもそういう風に見えているのだろうか──それは嫌だな。
自分でも驚くほど、スッと出てきた感覚に、安堵し、申し訳ない気持ちになる。
だが、それはそれ、これはこれとして、東京タワーに登ることを楽しんだ方が良いだろう。
東京生まれの東京育ちだけど、こうやって東京タワーの中に入るのは初めてだから。
周囲の圧倒的なカップル率に、ますます「同じように見られなくない」という思いが積み上がる。
展望台から街を見下ろす。
「……あ、これが『もうひとつの東京タワー』か」
都道三○一号と国道一号が合流しており、そこを走る車のライトが塔のように見えるのだ。
日没してからでないと見ることが出来ない、もうひとつの東京タワー。
それは美しくもあり、どこか滑稽でもある。
手を繋いでいいかと言われ、恥ずかしいからと断わった。本当はそれ以前の問題なのだけど。
次に会う約束を交わさない会話は、なかなか難しく、帰りの乗り換え駅で別れたあと、疲れのあまり大きな溜息が出た。
やっぱり、周りに流されて始めた婚活だからなのだろう。
条件だけでは好きになれない。好きになれそうもないとか、何様だ私は。
しばらく婚活は休もう。
お断りするのにこんなに労力が要るなんて、思わなかった。
────イルミネーション
12/15/2024, 7:41:36 AM