「終点」
そっと手を頬に触れさせた。
お前が夏に吸い込まれそーだった。
薄い唇が少し開いて泣きそうだった。
終点が迫ってた。
心臓が狂う音がした。
二人でこのまま、時間が止まるようにって。
踏切の音が遠くで泣いてた。
あー、いきにくい。
夏と一緒にサヨナラした方がいーんだって。
それくらい分かってたはずなのに。
お互いじわじわ縛りつけちゃって。
脳の裏にお前が焼き付いちゃって。
すごい近くいるはずなのに。
ほんの少しの埋められない距離が。
痛いし、もどかしいし、暑いし。
震えるお前にくっついた。
夏の終点がそこにあった。
優しい掠れた声に泣いてみた。
幸せとサヨナラの境界線が混ざった。
何を言えばいいのかわかんなかった。
サヨナラの終点。
終わりがもうそこで手を振ってる。
蝉の鳴き声でかき消された「 」は。
もう首を吊ってんだ。
「忘れモン、無いか」
「ん」
「じゃ、また」
「ん、ばいばい」
多分、終点を過ぎた。
8/10/2024, 12:24:51 PM