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『星のかけら』

《精霊の国は死者の国と関連する。
陽は射さず、ただ永遠の黄昏が続くだけ。》

《人が迷い込めばそれっきりで、現世に帰還するにはなんらかの使命を遂行して精霊の役に立たなければならない。》

そんな伝承を読み返しているのは、今日訃報を受けたからだ。

やさしい人だった。
傷つけられた私に「なんて酷い話だ」と慰めの言葉をかけてくれた。
どこかへ出かけると、いつもお土産を持ってその話聞かせてくれた。

訃報を知らせるメッセージに、しばらく呆然としてすぐに返信ができなかった。
その人本人には言いたいことはいっぱいあるのに、ご家族にはなんと言葉をかけていいのかわからない。

人は亡くなると星になるという。
ならばあの人がくれたやさしさは、星のかけらだろうか。

1/10/2025, 6:57:55 AM