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鏡に映る自分に触れた。実際はただただ平凡な顔で、言ってしまえば特段醜い訳では無いことくらい自覚してる。ちょっとの加工でみんなと大して変わらない顔面偏差値になれるんだから間違いない。けれど、今は、この瞬間は酷く醜く思えてしまう。ふっと視線を落として蛇口から流れる水を見た。
ふと思いついて視線を上げて、声に出した。素敵だね、と。ああ、よく見ると目もぱっちりしてるし、口元もいい感じじゃない?あれ、思ってたよりも自分って――なんて。思い込んでしまえば自分もカースト上位の子達くらい良い顔に見えたけど、その自己洗脳も解いてしまえば映るのは死んだ目をする気味の悪い表情だけ。嗚呼、君だったら毎朝鏡を見る瞬間も楽しいのかな、なんて思ったりして。花が咲くような笑顔や、ただぼーっとする表情さえも見惚れてしまうような君だったのなら。
そして君の顔を正面から見れる鏡にさえ嫉妬した。

やっぱり鏡は好きになれない。



[鏡]

8/18/2022, 3:15:23 PM