「君の名前を呼んだ日」
「君って、あんまり人の名前を呼ばないよね。」
ある日、君は言った。
人の名前は絶対に間違ったらいけないものだと思うし、大切なものだから気軽に呼ぶのは怖い。そう言うと、あなたははにかむように少し笑った。
「そっか。じゃあ私のことを本当に大切、そばにいてほしいと思った時に名前を呼んで。そしたらいつでも駆けつけるから。」
棺桶の窓から少し覗くあなたの顔は青白くて、それがたまらなく寂しくて、つい、あなたの名前を呼んだ。その響きに堪えていた涙が止まらなくなる。いつでも駆けつけてくれるって言ったのに、本当に必要な時にあなたがいないなんて。
私が初めて名前を呼んだ時、すでにあなたはいなかった。
5/26/2025, 1:29:45 PM