🍳たまごかけ🍂

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春休みに入り、部活も休みですることのない僕はとりあえず、家の近くの山を散歩しようと思った。
カメラを持ち、どの山道を進むか考えながら扉を開けると、、、庭に帽子が落ちていた。
家族の物でもないし、近所の人がつけてるのも見た事ないし、、、
「可愛い帽子だなぁ」とつぶやくと、
「ありがとう」と後ろから聞こえた。
名前も知らない綺麗な子がそこに居た。その子は帽子を見つめながら手を出して来た。数秒固まった後に帽子を差し出し、綺麗な笑顔と後ろ姿を眺めた。
散歩の途中、後ろ姿を撮っておけばよかったな、と後悔しながら山中の草花を撮っていた。
その日の夜に知った事だが、あの子は3つ先の家のじいさんの孫らしい。
春休みの間が家のリフォームで入れないからこっちに来てるそうだ、、
田舎特有の情報の伝わる速度に感心しながら、あの子の姿を思い出していた。
翌日は部活があり、朝から楽器を携えながら自転車に乗った。
部室につくと既に数人がチューニングを済ませ、だべっていた。
「あの子は写真が好きらしいよ」
「都会の子ですごくオシャレって聞いた」
「楽器も好きだったりするのかな?」
と、話題は昨日みたあの子らしい。僕にも話が飛んできたが、興味無いとつっぱね、チューニングを始めた。
数時間譜面とにらめっこしながら楽器を吹いて、今日の練習は終わった。
帰り道はカゴに楽器を入れ、押しつつ時々写真を撮りながら1時間近くかけて帰った。
家の近くになると またあの子に会った。特に話す事もないので軽く会釈をして、その場を去る
「何撮ってたの?」
その一言が僕の胸を引き止めた。
「なにって、、、、今日はレンズ間違えて撮ってないよ」
とカメラ好きには一瞬でバレる嘘をついた。
彼女は、ふぅーんじゃあ今度見せてといい、その場は静かに終わりを告げた。
数日間、その会話が頭にこびり付き僕はぼーとしていた。写真を撮る時も楽器を吹く時も本を読むも、頭が回らない、これは彼女が悪い。
そんな事を思っていると、彼女が来た。
写真を見に来たらしい、それほど写真が好きなんだろうか、それとも俺が?と甘い幻想を抱きながら、アルバムを貸した。
中には全国で銀賞を得た写真や、地域の小さな大会でも入選しないが好きな写真がバラバラに入っていた。
彼女はそのアルバムを見ながら、この写真は多分あそこね、これは綺麗に撮れてるね、少し被写体がブレてるのか、とブツブツ独り言を言っていた。
少し聞いていれば、基本ダメだしだ。
「文句でもあるのか?」
なにか恥ずかしいようなイライラするような思いを堪えながら、トーンの低い声で言った。
「ごめんなさいね、予想よりもいい写真ばかりで少しもったいないって思ったの」
と、予想しない回答だった。さらに続けて
「少し鍛えればもっといいの撮れるようになるよ」
「今度一緒に取りに行こうよ」
どういえばいいか分からない思いに突き動かされ、僕は数日部活を休んだ


「人物写真の練習をしておこう」
春風がなびく季節がまた来ればいいのに、

3/31/2025, 9:47:21 AM