John Doe(短編小説)

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グッバイ・エブリワン


「私は今、広大な宇宙とひとつになっている。そして世界と星ぼしは私を優しく包み、そして私はおかえしに彼らを愛している。人類は皆友達。敵なんてどこにもいない。本当の敵は自分自身の醜い心なんだということ、知ってる?」

机に座ったまま、彼女は囁き声で僕に向かってそう言った。
僕は彼女が受験のストレスでとうとうおかしくなってしまったと思った。彼女は目に涙を浮かべ、安らかに微笑んでいる。

「あ、ああ。そうなんだ……」

うふふ、と彼女は笑ってみせた。だけど今は授業中だから、あんまり関わりたくなかった。ほれみろ、先生が睨んでいるじゃないか。

「先生、『夜這い』ってなんですかぁ?」

馬鹿な生徒の一人が僕らに気遣ったのか、それとも本当に馬鹿なのか、そんな質問をした。

「そうですね。いわゆる、『男女の営み』ってヤツです」

先生はまるでロボットみたいに棒読みで即答した。

「だからその、『男女の営み』ってのを詳しく…」

馬鹿がそう言いかけたところで、先生は大声でこう怒鳴ったんだ。

「なら端的に言うぞ、セックスです!」

クラス中で爆笑の嵐が巻き起こった。分かってた。皆受験で頭がおかしくなってたんだ。彼女は頬を赤らめて、「先生ったら…なんてこと」とかほざいてやがんだ。おいおい、さっきまで宇宙と一体になっていたヤツのセリフかよ? と僕は彼女に呆れる。

「静かに! 静かにしなさい!」

「せんせー、それはセクハラですよー!」

「『夜這い』ってエロくない?」

「俺、今晩お前に夜這いしに行ってもいいかい?」

「静かにしなさいったら!」

「いやーん」

こうなってしまえばもうカオスだ。もうしばらくすると学年主任が飛んできて怒鳴り込みに来るだろう。僕はひたすらシャーペンの先で腕をザクザクと刺しているだけでいたって普通だ。

こいつらに比べれば。

11/8/2023, 10:51:36 AM