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身体が芯から冷えてくる。マフラーをしていても口元も凍えるような寒さの中、君はそっとコーヒーを差し出してきた。
仕事終わりで辺りはもう暗い、寒いのはお互い様だというのに君は真っ先にこちらにコーヒーを渡してくる。
君の方が寒そうな格好してるのに、そう思いつつその好意に甘えた。口内まで冷えてたせいか少し火傷しそうになり思わず身が震える。
大丈夫?そう笑う君を見て恥ずかしくなってくる。
同じように隣でコーヒーを啜る君の頬はほんのり赤く染まってるように見えた。
あぁ、風邪でも引いたかな。
寒い筈なのにどうしてこんなにも暑さを感じてしまうのか。
君が隣に居るから、なんて自覚したらきっともっと熱に浮かされるんだろう。
どうかこの微熱に気付きませんように。




・・・




上着のポケットに手を突っ込んでずっと鼻を啜ってる彼を見ていたら勝手に手が動いていた。
一瞬驚いた顔をしていたけれどすぐにコーヒーを受け取ってくれた、本当は猫舌だって事も知っていたけれどほんの少しの出来心で渡したらちゃんと飲んでくれて案の定熱くて反応していたね。
そんな姿を見てつい笑ったら君は僅かに眉間に皺を寄せて目を逸らしてしまった、耳まで赤く染まった君から目が離せなくなりそうだった。
……本当は、私が出てくるまで外で待っててくれた事知ってたよ。
あまり多くは語ってくれない君に何かしてあげたくなっちゃう、そんな気持ちを抱く度に私の体温も僅かに上昇してしまう。
これはきっと風邪じゃないんだよね?
……君が、この私の微熱にどうか気付いてくれますように。

11/26/2023, 6:08:33 PM