【新年】
新しい年の始めには、古びた社へと足を運ぶ。供えるのはみかんと雷おこし。子どものお遣いみたいなラインナップだが、ここの神様はこういうのを好むのだから構うまい。
パンっパンっと打ち鳴らした柏手が、新年の厳かに冷え切った空気を凛と震わせる。かつてであれば「また来たのかい?」なんて楽しげに笑う声が鼓膜を揺らしたけれど、今となっては社は沈黙を保ったままだ。
僕が幼い頃には時折透き通った姿を覗かせてくれた神様が、完全に姿を消してからもう五年になる。もしかしたら既に、信仰を失って消えてしまったのかもしれない。それでも。
「今年もまたよろしくね」
きっとこの声は、この信仰は、届いていると信じて。僕は今年もまた、無人の社へと語りかけた。
1/2/2024, 12:16:49 AM