ラララ
ラの音が鳴る。
それは、
雨粒のように落ちる涙の音。
冷えた空の底から、
重く、ゆっくりと落ちていく。
ひとつ、またひとつ。
耳の奥に沈んでいくたび、
忘れたはずの旋律が、
黒い波のように揺れ、
そして…滲むんだ。
君と奏でたあの曲は、
もう、聞こえない。
ただ、胸の中だけで、
静かにリフレインする。
ラ、ラ、ラ。
澄んでいたはずの音が、
こんなにも、鈍く響くのは、
何故だろう。
嘗て、
共に弓を引いた指先も、
鍵盤に触れた掌も、
今はもう、君の温もりには、
届かなくて、
今はただ、宙を掴むばかり。
あの頃は、
笑い合う友がいて、
そして——君がいた。
皆で奏でた、ラの音。
想い出の曲。
君は私の手を振り解き、
友は鬼籍に入った。
残されたのは、
歌えなくなった、バイオリン。
ラの音が鳴る。
低く、深く、沈む音。
もう君には届かない。
そして、ひとりきりの部屋に、
降り積もるだけ。
3/7/2025, 8:39:39 PM