椋 ーmukuー

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開門されたばかりの校門をくぐって長い長い一本道をひとりで歩いた。

まだ日は登りきっていなくて少し薄暗い教室がいつも見慣れた光景だった。誰もいない教室に入れるのは始発で来ている私の特権。人が集まり始めると私は馴染めなくなるから。

私とこの教室を繋いでいたものは人が入るにつれて少しずつ引き剥がされていくのをひしひしと感じた。明らかに分離していく。自分の意思なんて関係なしに。

誰の気配も漂わない孤独の空間は大勢に紛れ込んだ孤独の空間よりもよっぽどマシだ。存在しないように扱われるより独りぽっちで存在している方が楽だから。

毎朝吐きそうなのを堪えながら重い足取りで向かう学校に意味なんてあるのだろうか。私に向けられた問いに私は一生答えられないままだった。

題材「誰もいない教室」

9/7/2025, 6:40:44 AM