sairo

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「明日は、学校の花壇の花が咲くよ」

微睡む意識の中、声を聞いた。
誰の声かは分からない、穏やかな声。確かめようにも、意識は半分以上夢の中に沈んでしまっている。
今日も誰かは分からなかった。ただ言われた学校の花壇を記憶に留めながら、眠りに落ちていく。



次の朝。
目が覚めて、辺りを見回した。
誰もいないことを確認して、小さく息を吐いた。自分の部屋に誰もいないのは当たり前だというのに、それがどこか悔しい。

「一体、誰なんだろう」

いつからか聞こえてくるようになった不思議な声。眠りに落ちる寸前に聞こえるため、誰が言っているのかはまったく分からない。
昨夜のように花が咲くことを知らせることもあれば、水たまりができる、虹がかかるなど、とても些細なことを眠りに落ちる寸前に伝えられる。恐怖はない。ずっと隣で囁く声の正体が気になって、怖いと感じている暇などはなかった。
もう一度溜息を吐き、身支度を整えていく。

「学校の花壇……」

声が伝える出来事が外れたことは一度もない。だからきっと、花壇のチューリップが咲き始めたのだろう。

「本当に誰なんだか」

ぼやきながら、いつもより早く家を出る。
正体の分からない声に思う所はあるものの、植えたチューリップが咲いたのならば早く見に行きたかった。

3/14/2026, 2:51:40 PM