五 月 雨

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__ 高校受験が終わり、4月から高校生 。

高校時代 は 青春 。なんて 言う けれど 、私は 全然 そんな事 無かった 。



高校生になってから進む月日はとても早くて、あっという間に6月の梅雨 。



_ かと思えば梅雨も明けて、今じゃ晴天続きだ 。

私の暮らす場所は山の中 。周りが田んぼに囲まれた道を自転車で通り抜ける 。と 、目線の先に見えた小さな店 。老夫婦が営業している店だ 。かき氷と書かれた暖簾が少し暖かい夏の風に揺らめくのが見え 、思わず唾を飲み込んだ 。

こんなに暑いんだ 。少しくらいご褒美を貰っても罰は当たりはしないだろう 。

そう思い自転車を隅に停め 、暖簾を潜り中に入る 。中では扇風機が回っており心地良い風が吹いていた 。

目当てはかき氷だったけど 、ふと横を見れば光に照らされて美しく青く光る飲み物 。そう 、中にビー玉が入っているアレだ 。目に入った瞬間 、これにしようと決めた 。

レジに行けば 、老夫婦のお婆さんの方が奥から顔を出してきた 。

「 お 買 い 上 げ あ り が と う ね 。」

そう、笑顔で伝えてくるお婆さんに気恥ずかしくなりながらも、「 い え 、」と 私も笑顔を返した。


「 も う 、夏 も 本 番 だ ね ぇ 。入 道 雲 も 毎 日 の 様 に 出 て る 。」

「 ‥ そ う で す ね 。」


お婆さんが会計を進めながら 、私に話し掛けてくる 。急に何だ?と思いつつ 適当に返事を返す 。

ふと 、お婆さんが


「 夏 は 、好 き か い ? 」


と、尋ねてきた。突然の質問に目を丸くして驚いてしまったが、゛そ ん な に 。゛ と 、目を伏せ答える 。゛そ う か い ゛ と 、微笑み返答するお婆さんに私は少し変わった人だなと思った。



帰りは 、お婆さんが外まで来て見送ってくれた。

「 ど う ぞ 、 ご 贔 屓 に 」

深々と頭を下げるお婆さんに此方も、少し頭を下げた。



その場を後にし 、青く輝く飲み物を自転車籠に入れて家へと帰る 。自転車を停め 、ラムネを手に持ち 、家に入ろうとしたら何かの紙が落ちた 。なんだと思い紙を取れば __


゛ かき氷 無料 券 ゛ そう 書かれていた 。


「 ... こ ん な 気 遣 い 要 ら な い の に 、」

でも、口から出る言葉とは裏腹に 心の中はとても 暖かく 目頭が少し熱くなった気がした。



大きな入道雲と共に、夏の日差しが照り付ける。太陽に重ねるように、青く光る其れを 空に掲げた。




「 ‥ こ ん な 青 春 も 、悪 く な い な 。」





始めて心からそう思えた 。






#2

「 入 道 雲 」

6/30/2024, 5:26:56 AM