食欲の化身

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『お祭り』

夏祭りの境内は独特な熱気を孕んでいる。
祭囃子が響き渡り、何十人もの大人や子供の話し声や笑い声が飛び交う神社は、普段の厳かな雰囲気とは一転、大衆的な雰囲気に包まれる。

一見すると低俗とも言えるこの雰囲気が、私は嫌いでは無い。

年齢や性別、立場も違う、様々な人々が同じ空間で、同じ時間を過ごし、同じ感情を共有する。
普段は厳格な大人も、この日ばかりは羽目を外し、子供に交じってはしゃぎ回る。

踊口説が流れ始めると、男も女も、誰も彼もがリズムに合わせて手を叩き、踊り狂う。
その光景はある種の宗教的な何かを感じさせる。

その喧騒に引き寄せられるのは、人間だけではないのかもしれない。
お面を1枚隔てれば、人なのかそうでないのかの判断は曖昧になってくる。


人か魔物か夢現。
あそこに浮かぶは提灯か、人魂か。
私の前の此奴は人間か、それとも。

夏祭りの妖しげな雰囲気が、熱気が、私を惑わせる。

7/29/2024, 1:02:44 PM