鈴蘭

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【落ちていく】
や、いや、やだ。行かないで。

そう泣いて叫んでいる君の声が聞こえる。
ごめんね、どうか許して、赦してね。

僕は決まりを破った。【 】を食べてしまった。その罰として、自由を失ったから、落ちるしかない。でも君は、君だけはこの大空を飛び回っていて。
下には水が、海が見えた。高いところから落ちたら、水も固く感じるというから、落ちた僕は死んでしまうだろうか。

と、思ったけれど。落ちた先は心地良くて、あたたかいけど冷たい、海の底だった。水の中で呼吸ができるとか、二本だった脚が一本の尾びれになっているとか、言いたいことはたくさんあったが、最後に聞いた君の声が耳に張り付いて離れない。

どうか、彼に味方を、彼に大いなる水の味方を。

ああ、君は、僕が生きることを望んでくれたらしい。たとえ、もう二度と会えなくなっても、もう僕が空に戻れなくなっても、僕を生かしたことで君がどんな目に遭おうとも。それならば、僕も願おう。

どうか、彼女に味方を、彼女に大いなる青空の味方を。


罪を犯し、青空を飛ぶための自由の翼を失い、海へ落とされた男を想った女は、男に水の中で生きれるように、速く泳げる尾びれと、息をするためのエラを授けるよう願いました。その結果、彼女は教えに背いた裏切り者として扱われるようになりました。

罪を犯し、青空を飛ぶための自由の翼を失い、海へ落とされた男は、自分を想ってくれた女を想い、青空を変わらず自由に飛んでいけるように、青空にいた者達から男の記憶を消すように願いました。その結果、女は裏切り者として扱われることは無くなり、また自由に青空を飛ぶようになりました。

しかし、女の中には大きな喪失感が胸を締めて仕方ないそうです。

11/23/2023, 10:27:05 AM