太陽のような緋色の実が、風に揺られては鈴のように音を鳴らしていた。
そんなはずはない、と、耳を澄ましても、たしかに、音は揺れる南天の実から聞こえている。しゃん、しゃら、しゃりん、りん。神楽鈴のような音だ。一歩、木に近づけば、音はその分だけ大きくなった。
しゃん。鈴が鳴る。
しゃん。赤い実はいつしか眼前からなくなり。
しゃん。幾重にも連なる鳥居になっていた。
しゃん。一歩踏み出した足は何かに呑まれ、
――――南天はただ、風に身を任せるばかりだ。
2/23/2023, 7:54:16 AM