『青は全部、紛い物よ』
真っ白な肌によく映えた赤い唇は、毒を吐く。
そんなことを言ったら私たちがやっていることは何の意味もなくなってしまう。最悪、死んでしまう。
一世を風靡した青い血の一族。
脈々と受け継がれる偏った思想と慣習によって酷く歪められた呪われた一族だ。
私にはその一族の血が流れている、らしい。
直系のご子息に気に入られた母がこっそりと産み落とした不義の子というやつだ。そんなのはよくあることで、一族が根絶やしにされても家門を残すための保険として見て見ぬふりされている存在である。
まあ、母が私を産んだのは単に愛人として生活費を受け取るための口実にするためだ。美人な母に似て整った顔立ちと発育のいい身体は父をさらに喜ばせた。
なんせ、一族は呪いの影響で男女問わずみな身体のどこかに欠陥をもって生まれるので誰も彼も美しさとはかけ離れた容姿をしているのだ。誇れるのは己に流れる血だけ、という残念な一族だった。
そこに私が生まれた。どこにも欠陥がなく、その上器量良し発育良しとくればもう、とても便利な駒となり得る。
だから両親は私を大切にする。
――紛い物の青を一等大事にするの
バレたらきっと、例の広場に並べられたもののように腐った醜い姿を晒されるのだろう。
よく晴れた空の青が、腐った褐色に映って濁る。
どこにも青い血などありはしない。あるのはその辺にあるのと同じ色だ。綺麗なものも高貴なものもありはしない。
空の青も、同じだったりしてね。
『血の色で証明できるものなんてないのに、バカな人』
【題:空はこんなにも】
6/24/2025, 3:07:48 PM