怪々夢

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優しさ
私の名前はショージン。魔王サタン様のご子息、コタン様にお仕えする使用人です。コタン様は若干5歳にして魔道を極め、悪のエネルギーを最大限蓄積できた時、人間界を半壊させ得るだけの力を有します。そんなコタン様ですが、人間どもを恐怖に貶めるため、人間界に潜伏し弱点を探るという極秘任務に当たっておられるのです。私の役目は出来るだけコタン様が仕事がしやすい様にサポートすること。縁の下の力持ち、優秀なる黒子に徹するべく本日もコタン様に付き従っているのでした。

「ショージンは優しさと言うものを知っているか?」

「人間どもが持っている感情ですね。」

「そうだ。なぜ人間が優しさを持っているか分かるか?
人間は弱いから周りと協力しなくては生きていけない。集団で上手くやっていくコツは周りに媚び諂うことなのだ。そうして生まれた感情が優しさだ。俺はこの優しさを逆手に取って、人間を操り、絶望の淵に叩き込んでやろうと思っているのだ。」

「さすがは坊っちゃま、慧眼であらせられます。」

私とコタン様は山手線に乗り日暮里から池袋に向かうとこらでした。

「おい、ショージン、この電車という乗り物は中々に便利だな。」

「左様でございますな、坊っちゃま。」

「人間の技術者をさらって魔界にも作るとしよう。」

「さすがは坊っちゃま、慧眼であらせられます。」

「時にショージンよ、このシルバーシートは何故赤いのにシルバーと言うのだ?」

「シルバーと言うのは、高齢者を指す言葉でしてこの座席は高齢者や障がいのある方が優先で座れる席なのです。」

「何?ここは高齢者優先席なのか?では、そこのご老人に席を譲らねば。」

そう言うとコタン様は席を立ち、老婆に席を譲った。

「ああ、ありがとうね。小さいのに優しくて良い子ねぇ。」

老婆はペコリと会釈すると、優先席に腰を掛けた。

「おい、ショージン、この老人は今なんと言った?」

「坊っちゃまに対して優しいとおっしゃいましたな。」

「どう言うことだ?ただ私は当たり前のことをしただけなのに。」

「最近は、老人に席を譲る若者は少ないようですな。」

「この俺が優しいだと?なんか気持ちが悪くなってきた。ショージン背中をさすってくれ。」

コタン様の欠点は悪魔にしては人が良すぎるところです。
ですが、使用人にも対等に接してくれるコタン様を、私は命をかけて守り切ると神に誓っているのでした。

1/28/2024, 4:17:08 AM