雨に佇む
雨音が昇降口に響く。夕立ちだ。委員会が無ければ降られる前に帰れたのに。
「折り畳み傘、あったかな」
屋根の下、カバンをごそごそしていると、校門に見慣れた人影があることに気づいた。
雨の中佇む、ずぶ濡れの彼。いつか見たような光景。
私はやっと見つけた折り畳み傘を差して、彼の元に急ぐ。小さめの傘の中、二人、向かい合った。
ー・・・遅かったな。
ー待っててくれたの?こんなにずぶ濡れになって?
少し間を空けて、聞く。
「・・・信じて待っててくれたの?」
「俺が信じて、待っていたかったから待っていただけだ。お前は、信じたい人間だから」
また少し間を空けて、吹き出した。
ーおい!なんで笑うんだよ!
ーふふっ・・・ごめんなさい。帰ろう。
あんなに人を信じられず、不器用だった人がこんなふうに変わるなんて。なんて素敵な変化だろう。
もうすぐ止みそうな雨の中、相合傘が一つ。
前回の澄んだ瞳・だから、一人でいたい。の続編です。
三部作になりました。(みけねこ)
8/27/2023, 12:33:06 PM