憂一

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『善悪』

橋の下で少年と死にかけの犬とが対峙する。
自動車が上を通る度、橋はガタンと揺れる。
犬は語る。
「お前は俺を見てどう思う?可哀想だと思うか?ああ、そう思うだろう。だがな、俺がこんな有様になっちまったのは、一重に俺が逆らっちゃいけねぇものに逆らっちまったのがわりぃんだ。お前の善良な、俺を憐れむ心というのは、間違いだ。俺は完全なる悪であって、その罰を受けているんだ。」
犬は息を切らせながら尚も語る。
「善悪なんてもんを犬が語るなと思うだろうが、犬っころに語らせられるほど善悪というのは単純だ。それらは互いに相容っちゃいけねぇもので、互いにとって毒なんだ。だから坊主、さっさと俺から離れろ。お前という善良は俺という悪にとって毒だ。頼むから俺を苦しめないでくれ。」

4/26/2024, 1:39:09 PM