かたいなか

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前回投稿分に繋がるかもしれないおはなし。
最近最近の都内某所、某深い深い杉林の奥に、
「世界多様性機構」の「領事館」という厨二ふぁんたじー組織の建物がありまして、
これがまさかの、「ここ」ではない別の世界からやって来た組織でありました。

多様性機構の目的は、先進世界の技術を発展途上世界に導入して、発展を手助けすること。
そして、滅亡した世界の生存者を発展途上世界に避難させて、新しい生涯のスタートを支援すること。
領事館は、機構が設置する支援拠点でした。

ところでこの領事館の館長、可哀想なことに、日本に来てから重度も重度のスギ花粉症を発症。
この世界のお掃除ロボットと空気清浄機とを別世界の技術でもって合体させて、自動で動いて空気をキレイにしてくれるロボットを爆誕させました。
その通称を頑張◯ンバといいます。

頑張ル◯バは機械ですから、心がありません。
だけど頑張ルン◯"は妙なことに、
チョウチョを視認すれば追跡するし、
子狐を視認すれば上に乗るまで停止します。
領事館の扉が開いていれば、勝手に外に出ていってしまうことだって、あるのです。

うぃんうぃん、うぃんうぃん。
その日の夜の頑張◯ンバは、頭の上にコンコン、稲荷神社に住まう子狐を乗せておりました。
うぃんうぃん、うぃんうぃん。
その日の夜の頑張ル◯バは、稲荷子狐と一緒に1台1匹で、人の少ない道路を移動しておりました。

「うぃんうぃんさん、まだだよ、まだだよ」
稲荷子狐はお母さん狐にお願いされて、喫茶店の魔女の店主さんから、月のハーブティーを15パック入り1箱でどっさり、仕入れてきたのでした。
「うぃんうぃんさん、おうち着いたら、いっしょにおあげさん食べようね」

子狐が大きな大きなキャリーケースを、ガラガラガラ、引きずっておると、うぃんうぃんうぃん。
領事館から脱走してきた頑張ルン◯"が、何をどうやってそこまで来たのか、
ともかく、子狐の前に来て、そして、一旦停止。
牽引用に付けてもらっておったらしい背面のフックにキャリーを固定して、子狐を頭の上に乗せて、
そして、再発進したのでした。

コンコン子狐はすぐ分かりました。
頑張◯ンバは子狐が、重いキャリーケースに苦戦しておったのを検知して、助けようとしてくれているに違いないのでした。

「まだだよ、まだだよ」
稲荷神社までの道案内をしながら、子狐は頑張ル◯バの汚れを、少し拭いてやりました。
「キツネのおうち、まだだよ、まだだよ」

頑張ルン◯"は元々、屋内用の掃除ロボットであり、屋内用の空気清浄機です。それらの合体物です。
都会のアスファルトの上を走行して、土とホコリでだいぶ汚れてしまったので、
子狐は稲荷神社に到着したら、頑張◯ンバをよくよく拭いて、キレイにしてやろうと思いました。

さてさて、稲荷神社までは、もう少しでしょうか?
「まだだよ。まだ、まだだよ」
魔女の喫茶店から、ずいぶん遠くまで来ました。
稲荷神社はもうすぐでしょうか?
「まだだよ。答えは、まだだよ」

まだ、まだ。 まだ、まだ。
しれっとお題を回収して、うぃんうぃんうぃん。
頑張ル◯バと稲荷子狐は、稲荷神社まで1台と1匹、ゆっくり穏やかにキャリーケースを牽引して、車椅子用のスロープ階段をゆっくり伝って、
そして、子狐のお母さんとお父さんと、おじいちゃんとおばあちゃんが待つ自宅件宿坊まで、移動していったとさ。

9/17/2025, 7:35:27 AM