sunao

Open App

雨になるとあいつが立っている。


学校帰り、児童玄関の前、あいつが立っている。

赤い魚。

むなびれで黒い傘を持って、脛まで分かれた足の
先はスニーカーを履いて。

ぼくを待っている。

みんながそいつの横を通り過ぎていく。

だけどぼくが歩き出すと後をついてくる。

なにをするでもないが、ついてくる。

こんなの完全に不審者ってやつだと思うから、
ほんとは人に話したり、助けを呼んだりしたい。

だけどしってる。

こいつはぼくにしか見えてない。

家まで着くと、敷地には入らずぴたりと止まる。
そしてぼくが家に入って行くのをじいっと見てる。

しばらくして見に行くと消えている。

夏の間だけ。雨が降ったら必ずというわけでもない。


僕は大人になった。

今日は雨。

窓の外、会社の前の道に目をやる。

「また来てるな…。」




「雨に佇む」

8/27/2024, 2:37:18 PM