名無し

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無色の世界


「青春って何色だと思う」

少しどんよりとした、雨上がりの空気が漂う中庭で、君が言った。
何度も聞いた言葉だった。いつだったか、色んな人に聞いていると耳にした記憶がある。
そんなに聞いてどんな答えが聞きたいんだい?どうせ一辺倒な答えしか返ってこないだろうに。

どれだけそう思っていたって、私は君に否定的な意見を伝えたりはできないのに。
考えるだけ無駄だと理解しながら、ぼうっと空を眺める君に、いつもと同じ答えを返す。

「やっぱり青色なんじゃないかな。ほら、青春には青っていう漢字が含まれてるし。」
「…そう。貴女もそう答えるんだね。」

私は可能な限り明るく答えたつもりだったけれど、そんなことは関係ないのか、君は俯いてしまった。
君の、昔と比べてしわくちゃになった手には、一枚の写真が包まれていた。
紙はとうに色褪せていて、何度も手に持って見ていたのか至る所に折り目が付いていた。

まだ、モノクロの写真しか撮れなかったのだ。
写真撮影の時に着ていた服の色も、緊張して強張った顔の色も、あの日の暗い雲に覆われた空の色も、
今では全てが、灰色にしか見えないのだ。

君と描いた青春の日の思い出。
手元の写真しかない君には灰色の思い出でも、全て憶えている私には、未だたくさん色付いた青い青い思い出なんだよ。

4/18/2026, 3:43:12 PM