題名『激突』
(裏テーマ・透明)
昔、従兄弟の結婚式で叔母さんが会場の裏の出入口のガラス扉の左右を間違えて、開かない右扉にぶつかって顔にたんこぶを作ってみんなに笑われていた。
その数年後、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンに遊びに行って側にあるホテルに宿泊した。近くにいろんなレストランがありファーストフード店もコンビニもあった。特に連泊の二日目はホテルに馴れてコンビニに近い、ホテルの玄関と反対側の出入口を利用した。馴れていたのですが財布やホテルのキーカードを持っているか不安になり、また子供たちも寝ていたので置いて出たので急いでいて走っていました。
走りながらバッグの中を調べていたら、
ドーンっ!
バタっ!
俺の視界に星が何個も浮かんでいるように見えた。
永遠に感じた数秒後、なんとなく激突したことは理解できて、そうすると真っ先に思ったのが恥ずかしさです。痛みよりも恥ずかしさが人の優先事項では上でした。
目を開いて裏口に続く長い廊下を振り返りました。誰もいない。裏口の外も見る。人が歩いているけどこちらに気づいていない。
俺は心でガッツポーズをした。
それが分かれば急いで立って、何もなかったように出入口を確かめた。
自動扉は左だった。
俺は右の扉に激突していた。
次に気にしたのは割れてないか?
旅先で高額の賠償なんて俺の人生が終わる。
しかし、ほとんど跡さえ残っていない。心でセーフのゼスチャーをした。
そして左の扉から出た。
俺は買い物をしてからホテルの部屋に戻った。
この時でもまだ思い返すと恥ずかしくなった。
寝る前にシャワーを浴びようと浴室に向かった。浴室の前の洗面台の前で先に歯を磨こうとしてふと鏡に映る自分の顔を見た。
えっ?
額が血だらけだった。
前髪の上を強打してかなり出血していたようだ。
その顔で俺はコンビニやファーストフードへ行っていたと思うとゾッとした。考えてみれば、確かにこの夜は人とよく目が合うとは思った。少し俺の顔がイケてる?と勘違いしたくなるほど。
俺は馬鹿が付くほど楽天家だった。
翌朝も、あの扉から朝食を買いに出入りした。
じっくり朝の明るい中で見れば見るほど、その扉のガラスは『透明』だった。分かっていても無いように見える透明さだった。
もうホテルの掃除の人を褒めるしかない。
そう、思った。
若き日の、失敗談です。
5/21/2024, 7:45:26 PM