わをん

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『あなたとわたし』

わたしと同じ年、同じ日に生まれたあなたと学校で出会って仲良くなったね。あまりにもいつも一緒にいたから双子みたい、って言われるのも嫌じゃなかったとわたしは思っていたけど、あなたはどうだったかな。ほんとうのことはもうなにも聞けなくなってしまったね。
同じ年、同じ日に生まれたから占いの結果もよく似ていたはずだった。誰でもいいから人を殺して死刑になりたいひとにあなたは殺され、わたしはそうはならなかった。同じ場所、同じ時にそこにいたのにどうしてわたしはそうならなかったのだろう、と何度も思ったけれど、思うだけでなにも見つけられない。
お彼岸でもお盆でもない時期の墓地に枯れ花が並ぶ前を秋の花束を抱えて進む。あれから何年も経って犯人が望んだ刑も執行されて、世間を騒がせた事件のこともあなたのことも時が埋もれさせようとしている。けれどわたしには忘れようもない。
「お誕生日おめでとう」
物言わぬあなたからのおめでとうとありがとうは思い出に苛んだわたしをまた一年は繋ぎ止めてくれる。
秋風が吹いて色とりどりの花を揺らすのを、今年もあなたの仕業だと思えたわたしは少し微笑んでみせた。

11/8/2024, 4:07:35 AM