300字小説
狐の嫁入り
秋風に俺の昔からの友人の黄金色の尻尾が揺れる。
「だから、どんな相手か、こっそり見に行っただろう?」
俺は車で、こいつの結婚相手の森まで送っていっただけだか。ぽぉっした様子で帰ってきたところを見ると、かなり好みの美狐だったらしい。
「大丈夫だって。お前もお山の狐達を立派にまとめているんだ。お似合いだよ」
大安吉日。秋晴れの空の下、俺は山の近くの稲荷神社に、重箱に詰めた祝いの稲荷寿司を供えた。
「結婚、おめでとう」
今頃、奴の元に花嫁行列が着いた頃か。
突然、晴れ渡った空から大粒の雨が降り注ぎ、地面に跳ねてキラキラと光る。
持ってきた、こうもり傘を開き、鳥居から出、山を見上げる。
「だから、感激のし過ぎだって」
お題「秋晴れ」
10/18/2023, 12:44:03 PM