志千羽

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この道のさきに続く赤い線はなんだろう。
夜の散歩が趣味の私はそれを見た時、そう思った。
月夜ではあるが夜が満ち満ちていて少し先すら見えない。そんな中、街灯の下でテラテラと輝く赤い線。
子供の落書きで使われるようなクレヨンやチョークとは別の色だ。私は恐る恐る赤い線に触れてみる。ねちゃりと音を立てて線は太く地面にへばりつく。
私は知っているこの感触を。昔、母の部屋に勝手に入って触ったあれだ。
口紅
嫌な予感と考えが全身を包み込む。先の見えない道に続く赤い線を背に私は帰路に着いた。

7/3/2023, 10:21:03 AM