"ところにより雨"
ある日の昼下がり
なんだか怪しげな空をしているとは思っていた
清々しい雨の匂いを連れた風が私をくすぐる
足元に視線を落とすと、雲り空に当てられて影が消えている
影を伴わない足元は全く見慣れず、地から浮いた私は作りかけのゲームのNPCのよう
そんな様子を見つめていれば突然冷たい水滴で頭を叩かれる
咄嗟に抑えて顔を上げれば、運悪く雨が目の中を濡らした
びくっと体が反応して、突然洗われた目を擦り上げる
カバンに突っ込まれた手の先は、小さく畳まれた傘に触れた
けれども遅く、瞬きの間に悪戯な雨は強くなる
通り雨、数年前にも同じ状況にあったことがある
あの日の冷たい雨と思い出をなぞる。
楽しかったような切なかったような、ふるふると頭を揺すって思い出すのをやめた。
パチンッとボタンを外して傘を広げる
やっと降る雨から逃げ出したことに安堵する
傘の下で水滴の付いた髪や服を叩いて
どこからか来た雨を、どこかへ向かう雨の声を聞いていた
3/24/2026, 1:48:42 PM