あかまきがみあおまきまき

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    やりたいこと


 「やりたいこと?
 ふっ
 なにを今さら、馬鹿馬鹿しい
 アタシくらいのレベルになるとね、やりたい
 ことなんて何ひとつ無くなるのさ

 そもそもやりたいことってなんだい
 素敵なあの子と相思相愛になりたい?
 美味しいものをたらふく食べたい?
 どこか見知らぬ遠くを旅してみたい?
 はははっ
 お笑い草だね
 出来もしないことをただ夢見てるだけじゃな
 いか
 なになに?そのためにみんな頑張ってる?
 まったく滑稽な話だね
 頑張ったところで思いどおりにならなけりゃ
 それこそ絶望するだけじゃないか
 それどころか、それまでの労力だの時間だの
 が無駄になる
 心底、荒唐無稽だよ
 頑張るなんて意味なーーーし

 だいたいね、いま生きていられることに満足
 できないもんかね?
 そこそこ食べられて、それなりに眠れりゃ、
 それで充分じゃないか
 その上に『あれがやりたい』だなんて、贅沢
 ってもんさね

 アタシなんてね、ごらんよ、この身体中に生
 えたコケ?ゴミ?ホコリ?これ食べて生きて
 るんだから(モグモグ)
 アンタもひとつどおだい?遠慮せずにさあ
 ガハハハハハ

 あー、笑ったら眠くなったわ
 あ、起こさないでよ?
 丸一日起きなくても死んでるわけじゃないか
 らさ
 そんじゃ、おやすみー(グゥ……)」
 


 樹上でひとしきり話を聞いていたテナガザルの
 子供は、木の枝にぶら下がったまま眠る毛むく
 じゃらの獣を見て、なんだかホッと胸を撫で下
 ろした。
 良かった…ナマケモノに生まれなくて……。


 #001
 

6/10/2024, 1:08:26 PM